診療案内

内分泌疾患

「内分泌疾患」とは、離れた場所にある臓器(器官)間で情報の橋渡しをする「ホルモン」の分泌異常により生じます。ごくありふれた症状から見つかることもしばしばあります。

甲状腺疾患

 「内分泌疾患」の中では、比較的頻度が高い疾患です。「甲状腺」はのどぼとけ(喉頭隆起)の下にある臓器ですが、頭の中心にある「下垂体」という場所から分泌されるホルモンの情報を得て、基礎代謝や成長、脂質・糖代謝に関わる「甲状腺ホルモン」が分泌されます。 「甲状腺疾患」では、主に「甲状腺ホルモン」の分泌異常の疾患と、甲状腺内の結節(腫瘍)による疾患に分けられます。比較的女性に多くみられ、妊娠中での「甲状腺ホルモン」の分泌異常の疾患は、その管理に注意が必要です。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

「バセドウ病」は、甲状腺を刺激する自己抗体(TSH受容体抗体)が出現し、甲状腺を刺激することで甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患です。約400人に1人の頻度で発症し、男女比は1:2で女性に多く発症します。頻脈、体重減少、手指の震え(振戦)、発汗増加、いらいら感など甲状腺ホルモンの過剰分泌(甲状腺中毒症)による症状が出現します。甲状腺は全体に腫れることが多く、眼球が突出したり、まぶたが腫れたり、物が二重に見えたり(複視)する「甲状腺眼症」を合併する場合があります。

治療は、①薬物療法、②131I内用療法(アイソトープ療法)、③手術療法があります。当院での治療は①となりますが、②、③の治療法となる場合は、連携する医療機関にご紹介いたします。②、③の治療後の継続治療は当院で可能です。

甲状腺機能低下症(橋本病)

「慢性甲状腺炎(橋本病)」は、甲状腺の自己免疫異常によって甲状腺組織が破壊される疾患ですが、正確な発病の仕方は不明です。組織の破壊が進むと甲状腺機能が低下します。

一般人口における頻度は約18%という報告があり、それほど稀な疾患ではありません。男女比は1:10~20と女性に多く、加齢とともに増加します。大多数は甲状腺機能正常ですが、将来的に甲状腺機能が低下することがあり、経過観察が必要です。

甲状腺はほとんど腫れないものから、全体に腫れるものまで様々です。甲状腺機能が低下した場合、疲れやすさ、気力の低下、むくみ、寒がり、体重増加、動作緩慢、傾眠、記憶力低下、便秘、のどの枯れ(嗄声)などが生じます。これらの症状は、他の疾患にも出現しうるので鑑別診断をする必要があります。甲状腺機能が低下した場合、甲状腺ホルモンの補充を行います。ホルモン補充後も甲状腺機能は変動しやすいので、経過観察が必要です。

亜急性甲状腺炎 「亜急性甲状腺炎」は、何らかの要因により甲状腺に強い炎症が生じ、甲状腺が腫れ、甲状腺組織が破壊されることで、甲状腺ホルモンが甲状腺外に漏出し、甲状腺ホルモン作用が強く出る(甲状腺中毒症)疾患です。

風邪など上気道炎の後に生じることがしばしばで、ウイルス感染が原因ではないかとされていますが、正確な発症の仕方は不明です。遺伝的要因も考えられています。全甲状腺疾患の約5%の頻度で、男女比は1:10と女性に多く、6月~9月の夏季の発生が多く発症します。甲状腺の部分的な痛み、発熱症状、甲状腺中毒症状(動悸、頻脈、体重減少、発汗過多、手指の震えなど)が生じますが、気づかずに自然治癒することもあります。軽症では消炎鎮痛薬で経過観察をします。症状が強い場合は、ステロイド療法を行います。

発症後の甲状腺機能は、甲状腺中毒症→移行期→甲状腺機能低下症期→回復期と変動しますが、通常2~4ヶ月で自然治癒します。永続的に甲状腺機能が低下する場合もあります。その場合は、甲状腺ホルモンを補充します。

甲状腺腫瘍

「甲状腺腫瘍」は、甲状腺が部分的に腫れていることに気づき発見されることがしばしばですが、最近では超音波検査やCT検査などで偶然に発見されることが多くなっています。良性腫瘍、悪性腫瘍、腫瘍様病変(腺腫様甲状腺腫、のう胞)があり、超音波検査、穿刺吸引細胞診により診断します。

当院では通常の超音波検査に加え、腫瘍の硬さを画像化する「エラストグラフィー」の実施が可能で、良悪性の鑑別の一助とします。穿刺吸引細胞診も随時実施します。のう胞では穿刺排液を実施しますが、再貯留を繰り返す場合は、エタノール注入療法(PEIT)を実施します。手術療法等が必要と判断された場合は、連携する医療機関にご紹介いたします。

■2022年度 甲状腺疾患患者数:バセドウ病 121名、橋本病 146名、甲状腺腫瘍 129名
甲状腺超音波検査件数 268件
穿刺吸引細胞診件数  16件

下垂体疾患

 頭の中心に位置する「下垂体」は「前葉」と「後葉」に分かれ、それぞれ離れた場所にある臓器(器官)に情報を伝える「ホルモン」を分泌します。その分泌異常により様々な疾患が生じます。

先端巨大症

下垂体前葉から分泌される「成長ホルモン(GH)」の過剰により特有の顔貌や体型、代謝異常を来す疾患です。顔貌の変化、手足の容積増大、巨大舌などが多く見られますが、本人は気づかずに、周囲から指摘されることもしばしばあります。糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群などを合併します。

下垂体腫瘍(腺腫)によるものが大多数で、治療は原則手術療法となりますので、連携する医療機関にご紹介いたします。手術困難または手術にて完治できない場合は薬物療法があり、当院にて実施可能です。

クッシング病

下垂体前葉から分泌される「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」の過剰により、副腎から分泌される「コルチゾル」も過剰となり、特有の症状(満月のような顔貌、躯幹中心の肥満体型、野牛肩、腹部の線状の赤色皮膚病変など)が出現する疾患です。高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などを合併することがあります。

診断に用いる一部のホルモン負荷試験やカテーテル検査は入院が望ましく、その際は連携する医療機関にご紹介いたします。下垂体腫瘍(腺腫)によるものが大多数で、治療は原則手術療法となります。

高プロラクチン血症

下垂体前葉から分泌される「プロラクチン(PRL)」の過剰により生じます。下垂体腫瘍(腺腫)<プロラクチノーマ>、一部の薬剤(制吐剤、向精神薬など)、甲状腺機能低下症などで発症します。

授乳期でない成人女性において、乳汁分泌、無月経など月経異常、不妊を呈します。男性では無症状のことも多いですが、性欲低下、勃起障害、乳汁分泌が生じます。原因は様々であるので、それぞれに対する治療を行います。
薬物が原意の場合は服薬を中止、甲状腺機能低下が原因の場合は甲状腺ホルモンを補充します。プロラクチノーマの場合の治療はまず薬物療法を行います(当院にて実施可能です)。

成長ホルモン分泌不全症

下垂体前葉から分泌される「成長ホルモン(GH)」の分泌低下、欠乏による疾患です。「成長ホルモン」は成長促進作用のみならず、蛋白、糖、脂質、骨、免疫系など様々な作用を持っています。

小児期での発症は、成長障害をきたし低身長がみられます。成人では、疲れやすさ、集中力低下、気力低下、うつ状態、性欲低下などが自覚されます。うつなど他の疾患でも生じうる症状ですので鑑別を行います。成人の成長ホルモン分泌不全症では、内臓脂肪型肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、骨粗鬆症、動脈硬化症などを引き起こしやすく、心血管の合併症による死亡率が高いとの報告があり、その診断・治療は重要です。

診断に用いるホルモン負荷試験のなかには、入院が望ましいものもありますので、その際は連携する医療機関にご紹介いたします。判定基準を満たした(成人では重症型のみ)場合、成長ホルモン補充療法(皮下注射)を行います(当院にて実施可能です)。

下垂体前葉機能低下症

下垂体前葉からは、「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」、「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」、「性腺刺激ホルモン(LH, FSH)」、「成長ホルモン(GH)」、「プロラクチン(PRL)」が分泌されますが、それらのホルモンが単独または複数の分泌低下、欠乏があると生じます。

原因は、下垂体腫瘍、下垂体炎、手術後、血管障害など様々です。欠乏したホルモンの欠落症状が出現します(ACTH欠落症状:倦怠感、食欲不振、低血糖など、TSH欠落症状:寒がり、活発済低下、徐脈、うつ症状、脱毛など、性腺刺激ホルモン欠落症状:無月経、体毛脱落<陰部、わき>、インポテンツなど、GH欠落症状:(小児期)低身長、(成人)内臓脂肪型肥満、骨密度低下、うつ症状など、PRL欠落症状:乳汁分泌低下、排卵障害など)。

診断に用いるホルモン負荷試験のなかには、入院が望ましいものもありますので、その際は連携する医療機関にご紹介いたします。判定基準を満たした場合、それぞれの欠乏したホルモンの補充療法を行います(当院にて実施可能です)。

中枢性尿崩症

下垂体後葉から分泌される「バゾプレシン(AVP)」の分泌低下により発症します。「バゾプレシン(AVP)」は、腎臓において水代謝を行っていますが、分泌が低下すると、のどの渇き(口渇)、多飲、多尿の症状が出現します。多尿を来す疾患は他にもあり鑑別をしていきます。

副甲状腺疾患

 「副甲状腺」は「甲状腺」に接した場所にあり4つ存在します。副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌され、カルシウム(Ca)代謝に関わります。「副甲状腺疾患」では、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌異常の疾患と結節(腫瘍)の疾患に分けられます。

原発性副甲状腺機能亢進症

副甲状腺の腫瘍・過形成により「副甲状腺ホルモン(PTH)」が過剰に分泌される疾患です。2000人に1人と推計され、男女比は1:3と女性に多いです。遺伝性のものもあります。高カルシウム血症となりますが、軽度の場合は自覚症状がほとんど見られません。高度の場合は、疲れやすさ、脱力、多尿、悪心などの症状が出現します。悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症では高度の高カルシウム血症になりやすく、入院治療が必要ですので、速やかに連携する医療機関にご紹介いたします。

治療は手術療法が基本ですので、連携する医療機関にご紹介いたします。手術困難な場合は、脱水、不動を避けるなどの生活指導と薬物療法を行います(当院にて実施可能です)。

副甲状腺機能低下症

「副甲状腺ホルモン(PTH)」分泌低下または作用不全により、低カルシウム血症、高リン血症が生じます。遺伝性のものもあります。低カルシウム血症により、しびれ感、てんかん様の症状が出現します。

診断に用いる負荷試験は、入院での実施が望ましく、その際は連携する医療機関にご紹介いたします。治療はビタミンD製剤による薬物療法が主となります(当院にて実施可能です)。

副腎疾患

 「副腎」は「腎臓」の上に接した場所にあり左右2つあります。頭の中心に位置する「下垂体」から分泌されるホルモンの情報を受け、主に4つのホルモン(アルドステロン、コルチゾル、アンドロゲン、カテコラミン)を分泌します。 「副腎疾患」では、その副腎ホルモンの分泌異常の疾患と結節(腫瘍)の疾患に分けられます。その分泌異常により様々な疾患が生じます。

原発性アルドステロン症

副腎皮質から分泌される「アルドステロン」が過剰に分泌される疾患です。高血圧が主な徴候ですが、高血圧症の5~10%を占めるとも報告されています。高血圧やアルドステロンの直接の作用により、心血管合併症の頻度が高くなります。原因は副腎腫瘍(腺腫、過形成、がん)によります。

診断に用いる一部のホルモン負荷試験やカテーテル検査は入院が望ましく、その際は連携する医療機関にご紹介いたします。治療は、左右どちらかの片側の病変の場合は手術療法(連携医療機関にご紹介いたします)、左右両方の場合は薬物療法(当院にて実施可能です)となります。

クッシング症候群

副腎皮質から分泌される「コルチゾル」が過剰に分泌される疾患です。下垂体疾患の「クッシング病」と同様に、特有の症状(満月のような顔貌、躯幹中心の肥満体型、野牛肩、腹部の線状の赤色皮膚。病変など)が出現します。高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などを合併することがあります。

診断に用いる一部の検査は入院が望ましく、その際は連携する医療機関にご紹介いたします。原因は副腎腫瘍(腺腫、過形成、がん)であることが多く、原則手術療法を行います(連携医療機関にご紹介いたします)。

褐色細胞腫

副腎髄質から分泌される「カテコラミン」が過剰に分泌される疾患です。「カテコラミン」の中には、「アドレナリン」、「ノルアドレナリン」、「ドパミン」があります。これらの過剰は血圧を上昇させますので、高血圧が主症状です。発作的に血圧が上昇することもあります。その他、頭痛、動悸、発汗、体重減少などの症状が出現し、高血圧症、糖尿病、脂質異常症を合併します。原因は副腎腫瘍ですが、副腎外に腫瘍が存在することがあります。

悪性腫瘍の頻度は、他の副腎疾患に比べやや高いため、注意を要します。遺伝性の場合もあります。治療は原則手術療法となりますので、その際は連携する医療機関にご紹介いたします。

副腎皮質機能低下症(アジソン病)

副腎皮質から分泌される「アルドステロン」、「コルチゾル」、「アンドロゲン」の分泌が低下する疾患です。原因は自己免疫、副腎結核が大部分を占め、副腎皮質の90%以上が破壊されます。

疲れやすさ、脱力感、歯肉・手のひらなどの色素沈着、悪心、食欲不振、体重減少(小児は発育障害)、寒がり、無気力、不安症状が出現します。女性において、陰部、わきの体毛脱落も生じます。治療は不足する副腎ホルモンの補充療法を行います(当院にて実施可能です)。

副腎腫瘍

最近では、CTなどで偶然に副腎腫瘍が発見されることもしばしばあり、これを「副腎偶発腫瘍」と呼びます。副腎ホルモンの過剰産生の有無、良悪性の鑑別を精査します。

「副腎偶発腫瘍」の半数はホルモンを産生しない良性の腺腫です。この場合、6~12ヶ月ごとに画像検査、1年ごとにホルモン測定を行います。ホルモン産生過剰、悪性の場合は手術療法となります。

性腺疾患

 性腺ホルモン」は一部副腎から分泌されますが(アンドロゲン)、頭の中心に位置する「下垂体」から分泌されるホルモンの情報を受け、男性では精巣からテストステロン、女性では卵巣からエストロゲン、プロゲステロンが分泌されます。その分泌異常により様々な疾患が生じます。

性腺機能低下症(女性)

卵巣機能が低下するため無排卵となり、無月経となります。頭の視床下部、下垂体が原因となるもの、卵巣が原因となるもの、子宮が原因となるものに分けられます。ホルモン検査を行い鑑別しますが、産婦人科と連携し精査、治療を進めていきます。

性腺機能低下症(男性)

精巣は内分泌機能と精子形成能を持ちますが、少なくとも一方が障害されます。集中力低下、性欲低下、精液量減少から始まり、勃起障害、髭・体毛の減少、筋力低下、女性化乳房などが生じます。頭の視床下部、下垂体が原因となるもの、精巣が原因となるものに分けられます。ホルモン検査を行い鑑別しますが、泌尿器科と連携し精査、治療を進めていきます。

★内分泌疾患の解説については、日本内分泌学会のホームページ内にも掲載されていますので、ご参照ください。

内分泌疾患の解説
http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=1

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きむら内科 内分泌・糖尿病クリニック
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