今年は糖尿病治療薬が続々と登場しています。
食後高血糖を是正する超速効型インスリンでは、既存の製剤(ヒューマログ®、ノボラピッド®、アピドラ®)よりより速く効果が発現するインスリンが2剤登場しました(2月7日発売:フィアスプ®、6月17日発売:ルムジェブ®)。注射のタイミングも従来は「食直前」でしたが、「食事開始時」となりました。また、食事開始後20分以内の投与も可能となりました。より生理的なインスリンの供給がなされることとなり、超速効型インスリンでは、いずれこの新製剤が主流になっていくのではないかと思われます。
バイオシミラー(バイオ後続品)も超速効型インスリンで登場しました。バイオシミラーは、既に承認されている先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性、有効性を示す医薬品で、先行バイオ医薬品より薬価が安くなります。24時間効果を示す持効型インスリンでは、2015年にインスリングラルギン(先行バイオ医薬品:ランタス®)でバイオシミラーが登場し広く使用されていますが、超速効型インスリンのインスリンリスプロ(先行バイオ医薬品:ヒューマログ®)でバイオシミラーが6月29日に発売されました。インスリンはディスポーサブル製剤(使い捨て)とカートリッジ製剤がありますが、特にこのバイオシミラーのカートリッジ製剤の薬価はかなり安く抑えられていて、医療費の負担も少なくできます(ディスポーザブル製剤:先行バイオ医薬品 1キット 1,400円、バイオシミラー 1キット 1,258円 /カートリッジ製剤:先行バイオ医薬品 1筒 1,175円、バイオシミラー 1筒 586円)。
血糖上昇に応じたインスリン分泌作用だけでなく、食欲抑制作用、体重減少作用、心臓や腎臓の保護作用など様々な効果を併せ持つ「GLP-1受容体作動薬」も新しい治療薬が登場しています。
持効型インスリンとGLP-1受容体作動薬を配合した注射製剤は2剤となりました。(昨年9月26日発売:ゾルトファイ®、本年6月8日発売:ソリクア®)それぞれ持効型インスリンとGLP-1受容体作動薬の配合割合が異なるので、病態によって使い分けが必要となりそうです。
GLP-1受容体作動薬単独では、週1回皮下注射をするセマグルチド(オゼンピック®)が6月29日に発売されました。週1回のGLP-1受容体作動薬では、デュラグルチド(トルリシティ®)が広く使用されていますが、このセマグルチドはデュラグルチドよりHbA1cの低下や体重の減少を示すデータが出ています(SUSTAIN 7試験)。ただし、悪心、下痢などおなかの症状が出やすいようであるので注意が必要です。
最後に、注射薬のみだった「GLP-1受容体作動薬」に経口薬(のみぐすり)(リベルサス®)が近々登場します。1日1回内服の製剤で、注射の負担がなくなりますので、今後糖尿病治療薬の使われ方が大きく変わるかもしれません。